- 2026.06.30
- コラム
建設業許可の人的要件の一つ「経営業務の管理責任者」になれる人とは
建設業許可の取得を希望する際、最初に確認すべき重要な要件の一つが、適切な経営管理体制の整備です。
かつて「経営業務の管理責任者(経管)」と呼ばれていた要件は、令和2年10月1日の建設業法改正により、現在は「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(法第7条第1号)」の基準に適合する者が必要とされ、「常勤役員等」と呼ばれることになりました。
名称は変更となりましたが、実務上は現在も「経管」という呼称が広く用いられており、建設業許可申請における重要な審査項目として、一定以上の経営経験が求められるとことに変わりはありません。
制度改正により要件の考え方は広がりましたが、「どの経験が要件として認められるのか」「どの資料によって経験を証明するのか」は、申請実務において重要な確認事項となります。
今回は、建設業許可における経営業務管理体制について、認められる主な類型や、申請実務において問題となりやすいポイントを解説します。
経営管理体制として認められる主な3つのパターン

①建設業の経営経験が5年以上あるケース(直接経験)
最も一般的なのが、建設業の経営に直接関与していた経験によって要件を満たすケースです。
例えば、以下のような経験が該当します。
- 法人の常勤役員(取締役等)として建設業経営に携わっていた経験
- 個人事業主として建設業を営んでいた経験
- 建設業法上の「令第3条の使用人(営業所長・支店長等)」として営業所の管理運営を行っていた経験
②経営業務を補佐していた経験があるケース(準ずる地位の経験)
経営業務の管理責任者に準ずる立場として、経営者を補佐していた経験が認められる場合があります。
対象となるのは、単なる施工現場の管理ではなく、例えば以下のような経営業務への関与です。
- 資金管理
- 契約管理
- 組織運営に関する管理業務
この場合、「どのような立場で、どのような権限を持って業務を行っていたか」が重要になります。
実務上は、以下のような資料によって経営補佐の実態を確認していくことがあります。
- 組織図
- 職務分掌表
- 権限委任に関する資料
- 稟議書
- 社内決裁資料
審査においては、単なる現場管理ではなく、経営業務に関与する立場であったことを客観資料によって示せるかが重要になります。
③組織全体で適切な経営管理体制を整えているケース
令和2年10月の制度改正では、個人の経験だけでなく、組織全体の体制によって要件を満たす考え方も導入されました。
建設業の経営経験を有する常勤役員と、財務・労務・業務運営などを補佐する人材を適切に配置することで、要件を満たせる場合があります。
一方で、確認事項や必要書類は多岐にわたるため、事前の整理と制度理解が重要になります。
経営業務管理体制における「現場経験」と「経営経験」の違い

経管の要件について、実際の申請では、「現場経験」と「経営経験」に分けて証明していくこととなります。長年現場を担当していた場合でも、それだけで経営業務管理体制の要件を満たすとは限りません。
審査では、「経営陣としての在籍年数」と「その期間に建設業を営んでいた実態」の2点を、それぞれ別の資料で確認することになります。
まず「経験の年数」については、法人の場合は履歴事項全部証明書(会社の登記簿謄本)に取締役等として登記されている年数、個人事業主の場合は確定申告書を提出している年数で確認するのが基本です。 一方で「建設業の経営経験」については、その在籍時に間違いなく建設業を営んでいたかを確認するため、工事請負契約書や注文書、あるいは請求書とそれに連動する通帳の入金履歴といった実際の実務資料が使われます。
重要なのは、これらの資料間で整合性が担保されており、「継続して建設業を営んでいた実態」が客観的に確認できる点にあります。いくら経験年数を満たしていても、証明資料が不足していたり、資料間の辻褄が合わなかったりすれば、経験として認められないケースも少なくありません。
制度の要件をクリアするだけでなく、それを証明する資料まであらかじめセットで整理していくことが、建設業許可申請を成功させる鍵となります。
許可取得後も体制維持が必要
経営業務管理体制は、建設業許可取得時だけ整っていればよいものではありません。
要件を満たしていた役員の退任や組織変更が発生した場合には、変更届や後任者の検討が必要になることがあります。
建設業許可は取得後の維持管理も重要です。
更新や役員変更、事業承継なども見据えながら、継続的な管理体制を整備していくことが求められます。
まとめ

建設業許可における経営業務管理体制は、許可取得とその後の維持に関わる重要な要件です。
制度改正によって選択肢は広がった一方で、証明資料の整理や実務対応の重要性は高まっています。
確実な許可取得とその後の安定した運用のためには、制度内容を正しく理解し、継続的な管理体制を整備していくことが重要になります。
次回は、もう一つの重要要件である「専任技術者」について、実務経験証明の考え方や注意点を解説します。