- 2026.06.30
- コラム
【建設分野】特定技能外国人の受け入れガイド:技能実習との違いを比較
建設業界における深刻な人手不足を背景に、外国人材の活用を検討する企業が増加しています。これまで建設分野における外国人受け入れの中心であった「技能実習制度」に加え、平成31年(2019年)に創設された在留資格「特定技能」の活用も急速に広がっています。
もっとも、この2つの制度は制度目的や法的位置付けが異なります。受け入れ企業としては、それぞれの特徴や法的義務を理解したうえで、自社の採用方針や経営戦略に適した制度を選択することが重要です。
今回は、建設分野における技能実習制度と特定技能制度の違いについて、制度概要と実務上のポイントを整理しながら解説します。
制度の根本的な違い:「国際貢献」と「労働力確保」
技能実習制度と特定技能制度の最も大きな違いは、制度が設けられた目的です。
■ 技能実習制度
発展途上国への技能移転を通じた国際貢献を目的とする制度です。
外国人は「労働者」であると同時に「技能を学ぶ実習生」という位置付けであり、原則として本人都合による転籍(転職)は認められていません。
■ 特定技能制度
国内で人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能水準を持つ外国人材を受け入れる制度です。
建設分野における特定技能外国人は、即戦力人材として位置付けられており、一定の要件を満たす場合には転籍も認められています。
制度の目的そのものが異なるため、求められる役割や企業側の管理体制にも違いがあります。
求められる技能水準・日本語能力の違い
特定技能(建設分野)として就労するためには、一定の技能水準と日本語能力を証明する必要があります。
主な要件は以下のとおりです。
■ 試験に合格するケース
技能水準
・建設分野特定技能1号評価試験
または
・技能検定3級相当
日本語能力
・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
または
・日本語能力試験(JLPT)N4以上
■ 技能実習2号から移行するケース
技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能試験・日本語試験ともに免除され、無試験で特定技能1号へ移行できます。
現在、建設分野の特定技能外国人の多くが、この移行ルートを活用しています。

従事可能な「業務範囲」の違い
技能実習制度と特定技能制度では、外国人材が従事できる業務範囲にも違いがあります。
従来の技能実習制度では、職種ごとに受入枠が細かく区分されており、実習計画にない関連業務や周辺業務を行わせることは厳格に制限されていました。
一方、特定技能(建設分野)では、従来の細かな職種区分から、現在は以下の3区分へ整理・統合されています。
■ 土木区分
型枠施工、左官、とび、土工、舗装など
■ 建築区分
大工、左官、鉄筋施工、内装仕上げ、表具など
■ ライフライン・設備区分
配管、電気通信、保温保冷設備など
制度上の主な違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能(建設) |
| 制度目的 | 技術移転(国際貢献) | 労働力確保 |
| 業務範囲 | 職種ごとに限定 | 3区分内で柔軟に対応 |
| 周辺業務 | 制限あり | 関連業務に従事しやすい |
| 転籍 | 原則不可 | 一定要件下で可能 |
| 求められる役割 | 技能習得 | 即戦力 |
例えば建築区分に属する外国人材が、施工に伴う関連作業を担当するなど、現場状況に応じた柔軟な人員配置が行いやすくなっています。
建設業における人材不足への対応が課題となる中、柔軟な業務運用が可能である点は、特定技能制度の大きな特徴といえるでしょう。
受け入れ企業に求められる雇用条件と法的義務
特定技能外国人を受け入れる企業には、日本人と同等以上の適切な労働環境を整備する義務があります。
主なポイントは以下のとおりです。
■ 報酬額の同等性
特定技能外国人の給与は、同等の業務に従事する日本人と同等以上でなければなりません。
申請時には、日本人従業員との比較資料や賃金設定の根拠資料が求められます。
■ 常勤性・安定した雇用形態
建設分野では、特定技能外国人について常勤(フルタイム)での直接雇用が必要です。
また、建設分野では、外国人材の生活の安定や適正な処遇確保の観点から、安定した報酬体系の整備が求められており、雇用条件についても厳格な確認が行われます。
まとめ
特定技能制度の創設により、建設業における外国人材活用の選択肢は大きく広がりました。
即戦力人材を長期的に確保し、現場の機動力向上を図りたい企業にとって、特定技能制度は有効な選択肢となります。
一方で、建設分野では出入国在留管理局への在留資格手続きに加え、国土交通省への受入計画認定など、業界特有の制度対応も必要になります。
制度内容を正しく理解したうえで、自社に適した受け入れ体制を整備していくことが重要です。
次回は、建設分野特有の重要なルールである「JAC(建設技能人材機構)への加入義務」と、その実務上のポイントについて解説します。